木が持つ線、人が引く線。
2026/08/19
百年の重みを考えるプロジェクト
——試作の記録・続報
前回ご紹介した試作椅子から、さらに歩みを進めています。今回も、自然の造形を活かし、人がフォルムの線を全て引き直す事はしません。
このプロジェクトの目的は、当社が百年以上かけて立派に育てあげた、高さ30m以上の荘厳なスギに対する敬意と、今まで見守ってきた人達の想いを、何か特別な形として残すことです。
そうする事で作り出されるものは全て同じ形にはならず、百年のスギの歴史を残す事が出来るのだと思っています。
木が持つ線、人が引く線。
とは言っても、一切人の線を入れないわけでもありません。
木が百年かけて描いてきた線を残しながら、そこに人のデザインという線を足していく。
この写真の椅子は、樹皮を一部残してみることにしました。
もともと背面はすべて樹皮を残していましたが、その中でも根元が踏ん張って根を張っていた、張って飛び出ている部分のみアクセントで樹皮を残してみることにしました。
背面のそれ以外の部分は樹皮を削ぎ落とすことに。
まっすぐな板とは違い、自然の形をそのままにした素材は、削るたびに表情を変えていきます。だからこそ一度で仕上げず、何度も向き合いながら少しずつ理想の形に近づけていく——それが今の工程です。
白太と樹皮、二つの色が生む、ひとつの試み
また脚の部分もフロントの樹皮は残しています。この様な白太の白色と樹皮の濃い茶色のコントラストも、人間が作り出したデザインだと考えています。
その理由は、自然の状態ではこの様な白太の部分と樹皮の部分が同時に表出することはなく、人が手を加えることで創出されるコントラストだからです。木がもともと持っていた色の違いに、人がどこを残すかを選び取る——ここにも「木が持つ線、人が引く線」に近い何かがあるのではないか。そんな風に、私たちは捉えています。

